SXD赤道儀でノータッチガイドをしていると、星が西側に流れてしまいます。南北へのずれは極軸の精度不足が一番大きな原因と考えられますが、東西いづれか一方へのずれとなると原因がいろいろあります、考えられる原因をひとつづつ検証してみました。

①鏡筒のたわみ
 鏡筒が極軸の回転とともにたわんでしまい東西へながれることが一番目に予想できます。鏡筒を東西に反転して撮影することで撓む方向が逆になり、流れも逆になることが予想できます。極軸望遠鏡の精度を確認した際に、東西方向に反転してノータッチガイドをしましたが流れる方向は同じなので撓みの影響では無さそうです。
極軸01
  撮影データ  EOS 50D 1分露光x57枚 ISO400 NewFD500mm 4.5L (6.4絞りを使用) 
  北が上      撮影開始2016/4/28/23:43 撮影終了2016/4/29/00:43 テレスコープイースト
極軸(修正後)01
  撮影データ  EOS 50D 2分露光x23枚 ISO400 NewFD500mm 4.5L (6.4絞りを使用) 
  北が上      撮影開始2016/5/1/03:54 撮影終了2016/5/1/04:49 テレスコープウェスト
②東西方向への三脚の沈み込み
 コンクリートの上に三脚を広げているので、除外してもよさそうです。

③大気差による星の移動
 大気の屈折により高度の低い恒星は、浮き上がって見えます。写真で撮影すると、東の空では南東に、西の空では北東へ星が動くことになるのでこれも除外して良さそうです。また確認したGIFは天の赤道の南中前後の星を撮影しているのでほぼ影響はなさそうです。

③ウォームホイールの偏心

 ホイール中心とウォームギアが近いと速く、遠いと遅くなり東西ずれが生じます。偏心しているとウォームギアとウォームホイールのかみ合わせが変わり、緩い部分と固い部分がでます。ウォームギアを手で回してみましたが、ホイール全周に渡ってトルクの変動は感じなかったのでホイールの偏心はなさそうです。

④モータードライブの速度が遅い

 恒星は86164.09sで天を一周します。赤道儀の駆動速度がそれよりも遅いと星が西側に流れます。星の流れる速度から予想すると、モーターに原因があった場合0.2%の誤差になるので、それなりに高い精度での測定が要求されます。簡単に測定するため添付写真のようにしてモーターのギヤ1回転当たりの時間を実測してみました。ギアを複数回回転させ時間をかける事で、誤差の低減が可能になります。
モータードライブ
 理想的な回転速度として以下の数値から478.689s/回転を得ました。
ウォーム減速比 1:180
モーターとウォーム間のアイドラーギヤ比 1:1
恒星時 86164.09s

 実測の結果は以下のとおりです。読み取り精度としては±1秒は達成できたと思います
・測定1回目
ギア回転回数:26回, 回転に要した時間:12481±1秒
回転速度:480.04±0.04s/回転

・測定2回目
ギア回転数:90回,  回転に要した時間  43200±1秒
回転速度:480.00±0.01s/回転 
 
 実測値からは、明らかに追尾速度が遅れていることが分かります。この速度では極軸が1回転するには約86400s必要になりますが、これは平均太陽時に非常に近い値です。平均太陽時と恒星時には約0.3%の差があります。星の動きから求めた速度差が約0.2%なのでモーターの回転速度の遅れが西に流れる主な原因と考えられそうです。
 故障かもしれませんので、連休が開けたらビクセン様に確認してみたいと思います。

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■追記 2016/5/23
 ビクセン様に問い合わせしてみたところ、とても誠実に対応していただきました。赤道儀の追尾速度は、基本的には恒星時に基づいているそうです。また追尾精度向上のファームウェアアップデートが予定されているらしいですが、確定ではありません。

 個人的には、眼視観測やオートガイダーを使った天体撮影などではほとんど影響を及ぼさない事象だと考えています。今後もどんどん夜空の下で使っていきたいと思います。

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■追記 2016/6/16
 StarbookにPECを学習させることで、モータドライブの遅れ分も補正できないか試してみました。
追尾状況をGIFアニメーションにしました、上が北側になります。PECによってピリオディックモーションによる東西方向の往復運動はかなり抑えられていますが、モータードライブ起因の星が西に流れてしまう事象は防げませんでした。小さな累積誤差を修正するには1周期のPM学習だけでは不十分なようです。途中で1回星が北側にはねますが、私がカメラに触ったせいです。
 追尾(PEC有り)
  撮影データ  EOS 6D 1分露光x164枚 ISO3200 NewFD400mm 2.8L (F4絞りを使用) 
  北が上      撮影開始2016/5/13/01:07 撮影終了2016/5/13/04:07 テレスコープウェスト